2007-10-25
くもり

携帯電話マナーポスターが心臓ペースメーカー使用者に不安を与える

yuriko による 17:44:43 の投稿
カテゴリー: 鉄道ネタ

関東圏の鉄道事業者21社が、11月1日より、「優先席付近では携帯電話の電源をお切りください」というマナーをより徹底させるためのポスター掲示を行うようです (JR 東日本のプレスリリースPDF)。しかし、このポスターには大きな問題があります。それは、「心臓ペースメーカーなどの医療機器をご使用のお客様に安心してご乗車いただくために、優先席付近では携帯電話の電源をお切りください」と書いてあることです。

総務省の見解では「携帯電話は、心臓ペースメーカーから22cm離せば安全」となっています。22cmという距離は、座席に座っている人同士ならばほぼ確実に保たれる距離です。立っていても、満員電車ですし詰めにならない限り守られます。混雑率が 100% 程度 (座席とつり革がすべて埋まる状況) では、ペースメーカーには影響がないのです。

逆に、ペースメーカー装着者が安全に乗車するには、座席に着席さえすればよいことになります。優先席ならば「ペースメーカーを付けているので座らせてください」と言って譲ってもらえばいいでしょう。そして、隣の人は電源を切る必要もないのです。

そう、鉄道会社の言う「電源を切れ」は過剰な案内です。そして、過剰だけでなく、ペースメーカー装着者に「携帯電話を見ただけで不安になる」という逆効果さえ与えていて、かえって害になっています。総務省の指針である「22cm離れたら安全」はあまり広報されておらず、ペースメーカー装着者は「1m以上離れている携帯電話を見ても不安になってしまう」という現実があるのです。

別の問題として、人命にかかわる話なのにマナーの徹底で済ませている点があります。本当にペースメーカー装着者を守るならば、マナーではなくルールにするべきです。しかし、ペースメーカー装着者があまりに少ないため、そうするのはムダすぎます。日本にいるペースメーカー装着者は30万人程度です。そのうち、満員電車に乗る人は多く見積もっても 10% でしょう。また、22cm 以内に携帯電話が近づくと誤動作する機種は全体の 1% 程度しか残っていないと予測されます。そう、影響を受けるのはたった300人なのです。この300人のために、今回のキャンペーンが実施されているのです!! 影響を受ける人がこれぐらいの数だったら、それらの人に車掌室に便乗できるパスを発行するなどの特別扱いを行う方が安全かつ確実でしょう。

マイノリティーのために社会全体が配慮するというのはとても美しい行為なのですが、300人のために、7500万人の鉄道利用者 (平成14年大都市交通センサスより計算) すべてに電源を切らせるのは、壮大なるムダに思えます。ペースメーカー装着者、非装着者どちらにも負担が大きく、意味がないことです。

心臓ペースメーカーに関係なく、単に「電子機器を周囲でいじられるとうっとおしいから、使用禁止エリアをつくる」という趣旨であれば、優先席付近での電源オフに賛同できるんですが……。